アトピーが教えてくれること

息子が赤ちゃんの頃、散歩していると、知らないおばさまに声をかけられました。
「あら、アトピー? 病院には行ってるの?」

にっこり笑って「はい」と答えました。
病院に行って、すべて解決できたらいいですよね〜と心の中で荒ぶりながら。

私が子どもの頃にお世話になった方に、息子を連れて会いに行った時は
「必ず治してあげるんだよ」と言われました。

私だって、さっさと治してあげたいのはヤマヤマです(T_T)
と心で号泣しながら、「はい、頑張りますね!」とにっこり笑ってお別れしました。

タクシーに乗ったら、運転手さんに
「子どものアトピーはお母さんが食べていたものが影響するって言うよね~」と言われました。

「子どものアトピーは母のせい」と押し付けられる風潮は悲しいなぁ…と思いながら
「今は、遺伝子組み換えや農薬問題もありますし、昔と食べ物が違いますからね~。環境問題もありますし」とやんわり返しました。

アトピーにも存在理由があるのでは

誰も悪くない。
アトピーって一般的にこんなふうに思われている。

みんな、「アトピー大変だね」と思って、息子がよくなるように願ってくれているだけ。
なのに、私は自分自身を責めていたから、周りからも責められているように感じていました。

「子どものアトピーは私のせい」
そう思っているお母さんは多いです。

だけど、本当にそうでしょうか?

わが子がアトピーの体で生まれてきたのは、悪いこと?

そりゃ、健康体であることが一番ではあります。
アトピーじゃなくても、ほかの病気になりうる可能性もある。
ほかの大きな悩みを抱える可能性だってある。

息子のアトピーと10年闘い続けながらも、「どうして闘ってしまうんだろう」と違和感を感じていた私は、アトピーからのメッセージがあるはずだと思っていました。

心身にため込んでいるのが分かりやすい体

よく言われるのが「便、尿、汗など出すべきところから出しきれなくなったものが、肌から出てきている。肌は最大の排泄器官だから」ということ。
アトピーを無理に抑え込むと、外に出られなくなって内攻してしまう、とも。
だから、出させてあげればいい。

これは頭では分かっても、かわいい我が子の肌がひどいのは率直に言って、悲しい。

肌が気になっていると、ほかの子の肌が目に入ってきます。
膝裏がひどい時には、ほかの子の膝裏に目が行きます。
不思議ですね。
気になっているところが、自動的に目に入ってくるんだな~と脳の仕組みを自覚する瞬間。
そして比べなきゃいいのに、つい比べちゃう癖(^▽^;)

あぁ、本来の肌ってこんななのか。
こんなふうになるにはどうしたらいいのだろう、と。

消化しきれなかった食べ物だけでなく。
感情、ストレスも、出すべきところから出せなかったらお肌から出てくることがあります。
アトピーっ子も、お母さんも我慢強く頑張り屋さんだから(自分で言う(*’▽’))、自覚なくため込んでいたりするんですよね。

うちの息子も、学校であったことを3年も4年もため込んで、ようやく号泣しながら話してくれた、といったことがありました。
その件は何回にも分けて、親子で反芻し消化=昇華して、今ではその件についてさらっと話せるようになりました。

アトピーっ子は我慢強さ、意志の強さ、生真面目さ、繊細さ、優しさ…素敵なものをたくさん持っていて、それゆえに自分を傷つけてしまっている面があるかもしれません。

外の世界との境界線が壊れているSOS

息子は小1で学校に行きたくなくなった直後、アトピーが顔に大きく出始めました。 

小2でお世話になり始めたかかりつけ医には「顔のアトピーは、外の世界との境界線が壊れている状態だよ」と言われました。
息子が上記の学校とのことを抱え込んでいた時と顔のアトピー悪化は重なります。

当時、顔中血まみれにしながら学校に行くことを拒否されました。
私は「学校は、こんなになってまで行かねばならないところではない」と感じ、息子の「学校に行きたくない」気持ちを受け入れる方向で動きました。
でもその選択に不安があったため、まず私なりに「小学校1年生から学校に行かない」ということがどういうことなのか、片っ端から調べました。

これからどうなるのか。
進級はできるの? 卒業は?
実際、行かなかった人たちは学校外でどんなふうに過ごし、どんな人生を歩んでいるの?

調べまくって、私なりに納得して学校と話し合う心の準備ができてから、複数の先生方とお話しする場を設けていただきました。
学校からは「教室まで連れてきてもらえれば」と言われましたが、泣いて掻きむしって血まみれになって「行きたくない」と主張する子を連れていく気持ちにはどうしてもなれませんでした。

「ほかにも登校しぶりの子がいて、1週間お母さんに連れてきてもらったら、学校に来られるようになりましたよ。だから息子くんも…」
と担任の先生に言われて「ん? ほかにもいるの?」と思いました。

「こういうのは、誰かができたから、あなたもできる!というのは違うと思います」
「私は引きずってでも連れてこようとは思いません。息子は体が大きいし、力も強いので物理的にも無理ですよ」
「学校に来られたらいい、という問題でもないと思います。私はそこをゴールとは思っていないです」

「『教育機会確保法』というのがありますよね」
そう切り出すと、何となく先生方のまとう空気が変わりました。

アトピーも意思表示の表現ととらえると


「教育機会確保法」はざっくり言うと、「不登校は問題行動ではない」「学校を休むことも必要なこと」といった内容のもの。
息子は、悪いことをしているわけではないのだから、私たち大人がコントロールしようとするのではなく、本人の意思を大切にしたい、とお伝えしました。

アトピー悪化、血まみれになるほどの掻きむしりの現状の切実さもお話ししました。
無理をさせると、目に見える形で事態が悪化することをご理解いただけたのか、我が家の場合は、学校に最終的に「見守りましょう」と言っていただけました。

こうして、息子は自分の意思で学校から離れました。

いつまでになるのか?
これからどうなるのか?
そばにいて、何も思わないわけはなく、私も夫もそれなりに葛藤しましたが。

でも、そんな中で、学校に行かない選択をして、素敵な大人になっている方たちとの出会いがあり…「大丈夫なんだな」と安心感を得られました。
私の経験しなかった生き方を、息子は自分で選ぶことにしたんだな、と思いました。
中学生になった今も、学校とは距離を置いていますが、心配よりも「この子はこれからどんな出会いがあって、どんな人生を送るのだろう」とワクワクしながら眺めています。

アトピーでよかったことは?

あまりにも掻きむしりがひどかった時に、見ているのが切なすぎて、息子にこんなことを聞いたことがあります。

「アトピーでよかったなと思うことある?」

すると息子はすぐ答えました。

「学校に行かなくてよくなったこと」

確かに、アトピーじゃなかったら、血まみれになっていなかったら、私は息子を学校に連れて行こうとしたかもしれません。
口数が減ったり、「自由になりたい」と呟く息子に異変を感じながらも。
アトピーのおかげで、鈍感な私でも、息子の心をあれ以上壊さずに済んだのかな、と思うのです。

アトピーっ子は安心を得て、本来の輝きを取り戻す

小1の息子にとって、「先生」は「とても大きな存在」で、「同級生」は「監視役」だったようです。
そのイメージを払拭したくて、学校には「先生」としてではなく「一人の大人」として息子に接してほしいとお願いしました。

学校は、決して怖いところではないよ。
話せば、分かってくれるんだよ。
味方になってくれるんだよ。

学校にも、いろいろな学校がある。
いろいろな先生がいる。
それを長らく転校生して、学校にも先生にも人一倍出会ってきた私は痛感していたので。

息子に8か月の学校生活で「学校はこういうもの」と思ってほしくない。
ただ、必要なのは「安心感」だと思いました。

おかげさまで、学校から離れて、息子は小さい頃のキラキラした目も、茶目っ気も取り戻しました。
先生方のおかげで学校に対してネガティブイメージも小さくなってきたようです。
小学校を卒業する時には、自分で校長室で卒業証書を受け取ると決め、温かい卒業式をしていただいて「ありがたいね」と帰ってきました。

息子はアトピーと周りの方たちの愛によって、オリジナルの大切な経験をさせていただいているんだなぁと思うのです。

【関連記事】小学校と卒業にまつわる感謝のお話はこちら。

私たちは自分が経験したことのないことに向き合う時、どうしても不安を感じます。
でもそれは生存本能だから、自然なこと。
どんな自分にも「大丈夫だよ~」と声をかけてあげてくださいね。
根拠はなくても、大丈夫。
呪文だと思って、唱えてみてください。

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