奥底に押し込めていた不安の噴出

息子は約5年前の小1の冬、学校に行かない選択をしました。学校とは話し合いをして、時々やりとりをしながら見守っていただいています。

先日、息子の担任の先生が来てくださって、卒業アルバムの写真と名前の掲載をどうしたいか希望を聞かれました。修学旅行に続いて、最終学年ならではの選択肢。

写真、名前とも、載せる、載せないの選択肢だけでなく、もし載せるなら、写真は学校で貸切状態で写真屋さんに撮ってもらうこともできるし、家で撮影してデータを送るというのもあるよ!と説明していただいて。

息子は卒業アルバムとはどんなものか理解したうえで、写真も名前も掲載しないことを選びました。

息子が抱えていたもの

先生が帰った後に、息子が泣きたそうな表情になりました。思わずヨシヨシすると「もういいって」と語気強く言われました。でも、本心は違うなと感じられて、しばらくそばにいました。

しかめっ面の息子に「泣いていいよ」と促すと、絞り出すように泣き始めました。ずっと泣きたかったのに、泣けないでいたんだなと思いました。

このところ病院関係でいっぱいいっぱいで、こっちも泣いちゃうほどだったけれど、通院が一段落ついたこのタイミングで「卒業」のワードが出て、意識が一気に学校に向いて、押し込んでいた不安がブワッと出てきたのかもしれません。

息子はひとしきり泣くと、ポツポツと言葉が出てきました。

「学校に行かなかったおれはバカだ」

「焦りが出ている」

「中学校どうしよう」

「勉強したい」

本当はどうしたかった?

学校に行かない選択をした初めの頃は、家で勉強を頑張っていた息子でしたが、ドリルやテストなどを体が拒否した時期がありました。それで、無理してまでやることではないな、と感じて離れることにしました。教科学習はいずれやりたくなる時がくるのを信じて待とう、と。

そもそも、生きていること自体が学びなんだから。今の息子は、皆とは違う経験をしているだけで、それもまた価値ある学びだと思っています。

実際、息子は私が知らないことを知っているし、私には考えつかないことを考えています。逆も然りで「本当に大丈夫かな?」という思いは正直ゼロではないけれど。時が来れば、学びを楽しみ、彼は彼の人生を、その感性で切り開いていくんだろうと思いながら見守ってきました。

そんな私は、先ほどの息子の不安な言葉を聞いて、以前、ドキュメンタリー映画「自立への道」の監督さんが「不登校の子はみんな、闘っているんです」とおっしゃっていたことを思い出しました。

毎日大笑いしていたけど、息子も内側では闘っていたのか。ずっと不安を抱えていたのか。

「学校行きたい? 行きたいなら付き合うよ」

この私の提案はスルーされました。

「勉強する方法はいろいろあるよ」

こちらには食いついてきました。こっちが本命か。息子は「分かりたい」「できるようになりたい」「成長したい」んだな。

不安のもと

「中学校も選択肢はあって、いくらかは私も調べてあるんだ。息子がどうしたいか一緒に考えたいと思ってるよ」

サラリと伝えた私に、息子はこんなことを言いました。

「中学校までが義務教育なんでしょ。おれは義務を果たしてないんでしょ」

不安げな口ぶりに、どこかで「義務教育」の間違った解釈を受け取ってきたのかな?と思いました。ネット上でもたまに見受けられるし、そういえば最近そんなニュースもあったっけ。

「あのね、義務教育の『義務』は、息子の義務じゃないよ。息子にあるのは教育を受ける権利。義務は私たち大人が負っているもので、子どもが勉強したいのに教育を受けさせてあげないのはダメだよってこと。昔は学校行きたい子どもに、家の手伝いしろ!って行かせない親もいたらしいんだ。そういうのはダメだよってこと」

息子がホッとしたのを感じました。

このことは前にも伝えたような気がするのだけど。不安って、ほかのところでいくらでもスイッチを押されて増幅しちゃうものだから、しょうがないかな。ここでまた「違うよ」と伝えられてよかったです。

少しずつ、少しずつ

また一つ不安を吐き出せて、息子はデトックスできたみたいです。感情もため込むと毒素になるので、出せてよかった。

今はまたのんびり過ごしていて、数日前に「勉強したい!」と泣いたのが嘘のようですが、その気があるのは分かったので、急がず焦らず。

息子の「その気」がすくすくと育っていくにはどんなワクワクがあったらいいかな〜と妄想中です。


かつての私は、息子に勉強もお手伝いも「やらせる」「させる」のが当たり前になって、思うようにならないことにイライラしていました。

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