希望を描く

入院10日目。

左手首の掻き壊しは昨日のうちに急速に傷を塞ぎ、驚異の回復力を見せています。

昨日「これで最後」と自分を奮い立たせ、医師や看護師さんのご協力もいただいてさされた針は、今朝抜けてしまっていました。カルシウム点滴が終わった後だったのが救い。

「なんでだよ」

「もうやだよ」

息子は朝からしばらく悲しみに暮れていました。

原因は寝相かな~と私は思っていて、息子は寝汗のせいだと思っています。そして医師や看護師さんは掻きむしったんだろうと思っている様子。

まぁ、原因は何でもいいです。抜けちゃったもんはしょうがない。

泣いて、怒って、掻きむしって、気持ちを爆発させる息子を眺めながら、この子はこれからどうしようとするのかなぁと観察することにしました。

抜けてしまったとはいえ、まだガッツリ手首にはられた針を取り除こうとする看護師さんと、まだ使える可能性を捨てたくなくて断固拒否する息子。

肌のためにさっさと取ってしまいたいけれど、ここは息子の気持ちを優先したほうが良さそうだと感じ、看護師さんに「とりあえず、そのままにしておいてください。そのうち自分で気持ちの整理ができると思うので」とお願いしました。

息子と2人で話をしました。

息子「これ(抜けかかってる針)をもっと押し込めばいいと思うんだよ」

私「なるほどね。でも多分、それはできないんだと思う。前にお注射失敗した時だって、一回一回針を替えているはずだよ。一回さした針は、細菌とかいろいろ問題があるから、もう使えないんだと思うよ」

息子「もう嫌だ(泣)」

私「そうだね。私でも夜に、針をさしっぱなしで寝て無事でいられる自信ないわ。私が息子なら、点滴が必要な時に、その都度さしてくれって頼むな」

息子「それは嫌だ」

私「うん。私と息子は違うからね。じゃあ、息子はどうしたいか考えてみて。やりたくないなら、やらなくてもいいよ」

息子「本当? でも、やらなきゃダメなんでしょ」

私「採血して数値を見ないと先生は安心してくれないからね。『退院していいよ』とはならないだろうな。でもさ、採血しないでずっとここにいるというのもありじゃない?」

息子「それじゃ、父ちゃんが心配だよ」

私「採血以外に、退院できる指標があればいいんだけどねぇ」

私はここまで話して、息子に委ねました。息子はただゲームをしているように見えるけれど、内側ではものすごく考えている。

看護師さんがまた様子を見に来てくださって、手首の針たちはすっかり取ることができました。

その後、医師がいらして、少しお話をしました。

退院の判断には血液検査が必須であることが分かりました。

さぁ、どうなるかな。

「早く帰って、健康的なごはんを食べたいよ」

「父ちゃんとゲームしたいよ」

そんな息子の励みになるかは分からないけど、イメージは大事だから、思い付いて、病院食についてくる札の裏にこんな落書きをしてみました。希望を描く時ってワクワクします。

息子に見せたら「こうなったらいいよね」と一言。

私「なるよ。だって描いたら実現しやすくなるからね」

息子「退院できる直前に採血できればいいんだよな」

私「なるほど。そのタイミングをどう見極めるかだね」

ちょっと視点が変わってきたかな。

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